ジャワの暮らし54

2013/01/15 過去のブログ(エキサイトブログ)より

記念撮影会が終わり、メイクを落としてほっとした頃、マリオボロのアンクルン奏者クマッさんと甥でクトプラ役者のイプヌさんがやって来ました。
クマッさんは、挨拶もそこそこに
部屋にアンクルンを組み立て始めました。


私がびっくりしていると、クマッさんは演奏を始めました。童謡、ポップス、ランガム、ダンドゥット、洋楽などリクエストが飛び、次々演奏が繰り広げられます。ローフィの一番上のお兄さんはポップミュージックが大好きなのでこの突然の展開がとてもうれしそうです。


クマッさんは82年からアンクルン演奏を始め、各地を転々としたあと95年にマリオボロを拠点に活動、今に至るそう。昔はマリオボロの市場ですいかを売りながらアンクルンを演奏していたそうです。素晴らしい演奏だ、と人だかりができ、写真をたくさんとられた。それはいいんだけどフラッシュを次々たかれて目に刺激が強すぎてアンクルンが演奏しにくかったといいます。クマッさんは目がほとんど見えないのだけど光はわかるのでした。
また、街の不良にあがりを奪われたことも。これまで本当にいろんなことがあったそう。現在は、マリオボロにあるムティアラホテルのオーナーに気に入られ、ホテルのロビーで演奏をしているんだそうです。あれ?でもこの間マリオボロ通りで見かけましたが?と言うと、ホテルの勤務時間外は通りに出てやってるんだ、とのことでした。すごい。
クマッさんのライブの後は、
みんなでおしゃべり。


クマッさんはグンデルやボナンなどガムランの演奏もします。小編成のガムランと楽団を持っており、毎週金曜に定期練習をしているらしい。さらに音響機材もお持ちでご自分で操作するそう。以前とてもいい機材を持っていたが知人に騙され持っていかれたこともある、とイプヌさん。今はご家族でガムランスタジオ用にとジョグロ(ジャワの伝統建築スタイルのおうち)を建てているとか。
ガムランに加えて鍼灸も学ばれ、さらに妖怪に詳しく、イプヌさんがこどもの頃妖怪に誘拐されたのを探し当てたのもクマッさんだそう。高い木の枝に吊るされていたそうです。(ジャワにはこどもをさらう妖怪がいて、妖怪からこどもを連れ戻すための歌があります、それを歌いながらこどもを探すと見つかるのだそう)
クマッじいさんは体を治すこともできるとイプヌさん。ローフィが時々体に痛みが走ることをぽろっと言うと、どれどれとクマッさん、突如ボキッ!バキバキ!とすごい音がしました。
クマッさんは、ローフィには漢方薬やマッサージなどが足りなすぎる、体がぎゅっと固まっていて弛緩が足りないと言いました。(異変に)気付くのが遅すぎるぐらいだと言いました。ローフィはそれを聞き、これまで絶対に嫌だといっていたクリームを使ってのマッサージを人生初、クマッさんにやってもらうのでした。ローフィはクリーム状のものが皮膚につくのがきらいです。

夜中になり、みんなでミーゴレンを食べました。タバコをふかしながら語るクマッさんの目には見えない不思議な話に私たちは鳥肌をたてながら、ますます夜は更けていきました。
ひろみの友だちでアンクルンほしい人がいれば私に言いなさい、ひろみの携帯番号を聞いておこう、じゃあね。また会おう。このアンクルンはひろみにあげる。(え!)といってクマッさんは帰っていきました。
クマッさんが置いていったアンクルンは使い込まれて、音も少し変わってしまってる。クマッさんは長いアンクルン人生のほんの一部を話して聞かせ、使い込まれたアンクルンを置いて帰った。おれのアンクルンみたいに年取れよという意味なのかもしれない。ありがたく日本に持って帰ります。

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